PROJECT STORY01

高速道路の通行止め期間を、切りつめろ。

Hydro-Jet RD工法

高速道路でよく見られる「合成桁橋」。車が通行する部分であるコンクリートの床版と、その下に鋼の桁という、異なる材料を重ね合わせて造られた橋だ。その課題とされてきたのが、床版の取替工事に伴う通行止め期間。コンクリートと鋼の接合部を除去するのに手間がかかり、通行止めの長期化が避けられなかった。

その解決の切り札が、阪神高速道路・飛島建設・第一カッター興業の共同研究から生まれた『Hydro-Jet RD工法』だ。第一カッター興業のウォータージェット工法によって接合部をすばやく破壊し、通行止め期間の劇的な短縮に成功。土木学会関西支部技術賞や全建賞など、さまざまな技術賞に輝いている。

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吉田 啓助2000年入社/工事本部 ウォータージェット工事部 部長 兼 プラント事業部 事業部長

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倉田 正一郎2009年入社/工事本部 ウォータージェット工事部 整備開発課 係長

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菅原 雄哉2010年入社/工事本部 ウォータージェット工事部 工事課 課長

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01/03

水を逃がすな。

きっかけは、飛島建設からの打診だった。「阪神高速道路の共同研究公募に応募したい。一緒にやってみないか」。信頼関係の賜物か、高い技術力が見込まれてのことか。こうしたお誘いは、じつは珍しくない。だが、前例のない取り組みとなるだけに、実用化にまで至るのは残念ながらレアケースだ。ところが今回は違った。応募した内容が阪神高速道路に高く評価され、晴れて3社の共同研究として動き出すことになったのだ。第一カッター興業の主要メンバーは、全体を統括する吉田、現場施工の菅原、そして機械設計の倉田。

テーマは「合成桁橋の床版取り替えの工期短縮」。簡単にいえば、高速道路の古くなったコンクリート部分をすばやく取り替えたい、というもの。コンクリートは鋼の桁と結合されており、その結合部分を取り除くのに時間がかかる。時間がかかれば、通行止めが長引く。そこで、超高圧水を噴射する『ウォータージェット工法』によって、結合部分をすばやく破壊してしまおうというのがアイデアのコアだった。

ウォータージェット工法そのものは、第一カッター興業にとって超がつくほどの得意ワザだ。使いこなすことに問題はないが、クリアすべき条件もあった。その最たるものが「足場」。足場は高速道路の真下、つまり空中に吊るされるように設営される。破砕されたコンクリートなどを含む使用後の水を確実に回収するためにも、防水を徹底する必要があった。もし漏水があれば、地域住民の不安にもつながりかねない。

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02/03

デモ前日の綱渡り。

足場を吊るすチェーンの基礎にシリコンを充填したうえ、アスファルトの防水シートを敷きつめる。すると、防水はもちろん、防音においても理想的な状況をつくれる……。そのアイデアにたどりつくまで時間はかからなかった。だが、実行は簡単ではない。どう計算しても、飛島建設にも負担と協力を仰ぐ必要がありそうだ。

おそるおそる申し出てみると、意外にもすんなりと話は通った。それどころか、漏水検知装置を設置することまで決断してくれた。「ジョイントベンチャー(※)として、一緒にやっていくプロジェクトですから」。つまり、パートナーとして肩を並べ、協力し合う存在。うれしい言葉だ。足場を試作し、即席のプールをあつらえてテストしてみる。一週間たっても水は漏れなかった。予想以上の成果にメンバーは確信を強めた。これなら、いける。
※ジョイントベンチャー:建設業において、複数の企業が一つの工事を受注・施工することを目的に形成する事業組織体のこと

一方で、予想外のハプニングもあった。それは、大型模型を用いたデモンストレーション前日のこと。試運転をやろうと、定位置である2本の桁の間に機械を置こうとした。ところが、なぜか入らない。どこで手違いがあったのか、寸法が20cmも間違って伝わっていたのだ。メンバーは青ざめた。翌日には、阪神高速道路からの見学者がバスを貸し切ってやってくる。間に合わせるには、機械のダウンサイズしか手がない。あわてて改造に取りかかった。カバーなどの動作に影響がないパーツを取り外し、刻むようにして寸法を詰めていく。綱渡りだったが、どうにかお披露目に漕ぎつけることができた。

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03/03

まだまだ。だから、面白い。

『Hydro-Jet RD工法』が発表されると、大きな反響を呼んだ。新聞や業界誌にたびたび取り上げられ、多くの問い合わせがあった。さらに、社外の技術賞を次から次へと受賞したばかりか、2つの特許取得まで果たした。「これだけでも一生、食べていけそうだ」「防水足場で独立しようか」……メンバーの間では、そんな冗談めかした会話まで交わされた。

現在までに、『Hydro-Jet RD工法』は2つの現場で導入されている。しかし、工法として完成したわけではない。「まだまだ現在進行形でブラッシュアップが続いている。だからこそ、やりがいを感じる」。倉田が言えば、菅原はこう付け加える。「『こんなことができないか』という飛島建設さんのリクエストも増えている。それをクリアしていくのが楽しい」。

統括を務めた吉田は語る。「自分が気づける社会課題の範囲は限られている。けれど、お客さんから持ち込まれる相談はその幅を広げてくれるし、重要なテーマが含まれていることも多い。そういったプロジェクトそのものはもちろん、プロジェクトを通じて、人が成長していくところを見るのも面白い」。それでは吉田が考える、プロジェクトを通じて成長できるタイプとは? 「しなやかな人。多少のことでは気持ちが浮き沈みせず、肩肘張らずに取り組んでいけるかどうかが大切だと思う」。吉田たちも、しなやかさを失うことなく『Hydro-Jet RD工法』と向き合い続けていく。

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