PROJECT STORY02

なんとかしたい。その思いが、発明の切り札。

追従式プーリーユニット

コンクリートなどの切断に使われる『ワイヤーソー』。ダイヤモンドビーズのついたワイヤーを対象物に巻きつけ、高速で回転させる切削工具だ。第一カッター興業でも多くの解体現場で活用されているが、切断方式によって大量の粉塵が発生するなどの課題があり、作業を中断することもたびたびだった。

それを解決したのが『追従式プーリーユニット』。プーリーと呼ばれるパーツを含んだユニットの働きによって、無電源・無配線での作業効率化を実現。作業しながらの集塵が可能で、さらに切断精度も高まる。30年以上にもわたるワイヤーソーの歴史に新たな発明を加え、特許の出願にまで至ったこのプロジェクト。始まりは、2人の社員の「やってみるか」だった。

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河野 允告2007年中途入社/工事本部 計画課 課長

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内田 健2012年中途入社/工事本部 技術開発部 整備開発課

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01/03

コロナ禍の「思いつき」。

河野の趣味はバイクだ。自宅のガレージには4台の愛車がある。その整備中、ブレーキをいじっていて閃いた。「この機構を使えば、ワイヤーソーの問題もなんとかなるのでは?」。

時は2020年の春。新型コロナウイルス感染症の第一波が猛威を振るっていた。テレワークの合間をぬって、河野はアイデアを簡単な絵にしてみた。ホームセンターで材料を調達すれば、なんとか自作できそうだ。ゴールデンウィークが来ても外出などできないだろうし、ちょうどいいヒマつぶしになるかもしれない。……しかし結局、河野は自作を思いとどまった。自分がやっても、趣味のDIYという範疇を超えない。ちゃんと腕のある相手に頼んでみたい。浮かんだのは、これまで何度も開発で組んできた内田の顔。

河野から図面を受け取った内田は、なにげない顔をしながら内心では悔しがった。「よくこんなこと思いつくよな。でも……たしかに面白い」。内田は会社に転がっている廃材をあさった。穴の空いた長靴を見つけ、底をはがしてブレーキの材料にする。そんなふうにやりくりしながら、正味10日間ほど。「できましたよ」。河野に試作品の写真をLINEで送った。今度は、河野が舌を巻く番だった。「最初からうまくはいかないだろう」。そう高をくくっていたのに、予想をはるかに超える完成度だったのだ。

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02/03

サロマ湖畔で盛り上がる。

試作品が期待を超えると、欲も湧いてくる。「ここ、こうならない?」。河野がアイデアを思いついては送り、内田が技術で答えを出すというやりとりが続いた。もちろん2人とも、本来の仕事をしっかりこなしながら、だ。「勝手にやっている分には、失敗しても誰にも迷惑はかからない」。

とはいえ周囲の反応が知りたくて、河野は試作品を動画に収め、何人かに送ってみた。返信のほとんどは、「また変なこと始めたの?」とあっさりしたもの。思いついたら、やってみる。それが特別なことではない、第一カッター興業らしい反応といえるかもしれない。

試作品の完成度がいよいよ上がってくると、河野はついに会社に話を持ち込んだ。「いいものができたので、量産させてほしい」。すぐにゴーサインが出た。「鉄は熱いうちに打て」という格言の通り、内田は2020年の夏、北海道はサロマ湖の現場へと飛んだ。試作品を実際に使ってもらい、意見を仰ぐためだ。「これ、すごくいいじゃないか!」。リアクションは上々だった。触発されたように、あるスタッフは休憩時間中にスケッチを描き始めた。「こうできると、もっといいけど」。「それなら、ここはこんなふうに……」。すかさず内田がアイデアを重ねる。こうしたやりとりが生まれるから、現場通いはやめられない。これらのやりとりは図面に反映され、量産の準備は整った。

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03/03

自己満足も、量産すれば、
みんなの満足。

『追従式プーリーユニット』が装着されたワイヤーソーは、各営業所に一つずつ届けられ、好評をもって迎えられた。特許出願も含めて大きな成果を残したわけだが、「『プロジェクト』と呼ぶほど大げさなものじゃない」と河野は言う。「はじまりは本当にささやかな思いつき。それが、内田を始めとする多くの人が関わってくれたおかげで、いいものになった」。人と人とが関わることの相乗効果について、内田も同意する。「試作品を見せると、河野からダメ出しがくる。『このやろう』と思うけれど(笑)、そのおかげで、自分にはなかった視点に気づける」。

アイデアのきっかけは、どこからやってくるのだろう。河野は「現場でイヤな思いをすること」だと言う。「二度とあんな思いをしたくない。じゃあ、何を変えるべきか。そこから考え出す」。内田も言い添える。「始まりは自己満足かもしれない。でも、それが現場に行きわたれば、みんなの満足になる」。もちろんその後押しとなっているのは「やってみたいなら、やってみればいい」という、自由度の高い第一カッター興業の社風だ。

最後に、この社風にフィットするタイプを2人に尋ねてみた。「目的から考えられる人。たとえば『紙を4つに折る』と行動を求められた時、捨てるために小さくしたいのに丁寧に折っても意味がない。『何のためにやるのか』を大切にできる人なら、きっとうまくいく」(河野)。「『こうしたほうがいいのでは』と発想できる人。それを問いかけてもらえれば、いい会話のきっかけにもなる」(内田)。自分から目的を見つけ、動き出す。そんな人ほど、楽しめる環境が待っている。

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