「人間としての幅をもっと広げたかった」——営業一筋10年の井上さんが、本業以外の社内プロジェクトにもチャレンジする理由

第一カッター興業株式会社(以下、DIC)には、関東を中心に10以上の事業所があります。中でももっとも大きいのが、90名以上のメンバーを抱える茅ヶ崎営業所です。

そんな茅ヶ崎営業所で10年以上、営業の仕事を続けているのが営業2課係長の井上さん。本業のかたわら、昨年行われたDICのリブランディング・プロジェクトに有志メンバーとして参加し、その後も社内プロジェクトに参画し続けています。

井上さんは営業をする際にどんなことを意識しているのか。また、なぜ本業以外の社内プロジェクトに挑戦し続けるのか。それを支えるDICの組織カルチャーについて聞きます。

営業の極意は、お客様と現場との「信頼関係作り」

——まずは井上さんの現在のお仕事について教えてください。

神奈川県の県央地区を中心に、営業の仕事をしています。お客様からお仕事を持ち込まれることが半分、こちらからお困りごとがないかを伺いに行くことが半分といった割合です。先方からの依頼の場合、工事が決まるとまず相談をいただきます。そこから見積もりや書類を準備し、関係者と調整を始めます。

お客様は9割が昔からお付き合いのある方々。なので営業は、個人の力というより、DICに対する信頼があってこそ成り立っていると思っています。そうやって選ばれ続けるためには、なにより現場の仕事で応えなければならない。営業と工事課の連携が不可欠です。お客様に対してだけでなく現場との信頼関係を築くことも、営業の大切な仕事だと思っています。

——井上さんはかなり長く営業の仕事をされていると聞きました。

新卒で入社してすぐ工事課に配属され、2年目に営業課に異動。それからずっと営業にいるので、もう10年目になりますね。現場を大事にしているDICでは、通常、入社して数年間は現場経験を積ませます。しかし、僕の場合、入社前から営業職を強く志望して折に触れ上司にも異動希望を伝えてたので、たまたま営業に欠員が出たのをきっかけに、早いタイミングで営業課への異動が叶いました。

「できない」とは言わない。先輩から受け継いだ営業の信念

——2年目で営業課に異動され、そこから10年間営業畑を歩まれてきた井上さん。これまでのキャリアで、ターニングポイントとなった出来事はありましたか?

ターニングポイントは営業3年目のころでしょうか。実はあんなに希望していた営業職でしたが、配属された当初の2年ほど、少し燻っていた時期があります。というのも営業課は想像していた以上に仕事が多く、タスクに忙殺される日々。毎日、やるべきことを「こなす」のに精一杯で、成績も思うように上げることができなかったんです。あの頃は周りや上司にも心配をかけていたと思います。

年次が進むにつれ任される担当エリアが増えてきて、同じやり方では仕事が終わらなくなりました。このままじゃダメだと、仕事の進め方を根本から見直すことに

ちょうどその頃、当時営業課でトップ成績をあげていた先輩が教えてくれた言葉があります。それは「お客様からのどんな要望に対しても、決して『できない』と言わない」こと。お客様からご相談いただくことのなかには、既存の技術だけでお応えするのは難しい内容もあります。それでもお客様は、何かしらDICにできることがあると思って相談してくださっている。ならば、決して「できない」とは言わず、どんな形でも力になれることをひとつは提案すること。それが営業としての誠意なのだと言っていました。

以来、ずっと同じことを心がけています。要望そのままでは難しい内容でも、少し見方を変え、工夫すればできることがある。お客様との関係性が長くなるほど、相手への理解度が深まるので、提案の幅は広がります。そうやって少しずつ、お客様との信頼関係を築いていきました。次第に営業として成績を残すことができるようになり、ここ数年、目標達成を続けることができています

全社プロジェクトという新たな挑戦を経ての学び

——10年間、積み重ねてきたものを感じました。営業一筋でやってこられた井上さんですが、昨年、DICのリブランディング・プロジェクトに参画されましたね。まずは、どのようなプロジェクトだったのか教えてください。

2021年11月、DICは「中期経営計画(2022年6月期〜2024年6月期)」を発表しました。中経で定めた経営方針を分かりやすく発信するため、ホームページリニューアルなどを行ったプロジェクトが「リブランディング・プロジェクト」です。メンバーは有志で集められ、新卒から中堅社員まで、40名近くが参加しました。

——参加された経緯を教えてください。

営業を長く続けていると、次第になにか新しいことを始めたい気持ちが出てきました。そんな時にちょうどリブランディング・プロジェクトの社内公募が出たんです。DICはメーカーなどと違って、世間から見るとなにをしている会社なのかいまいち分かりにくく、友人に自分の仕事を聞かれた際、うまく説明できない自分にもやもやを感じることがありました。もっと世の中に対してDICを分かりやすく届けたい。そんな思いからリブランディングチームに加わったんです。

そこで主に関わっていたのは、中期経営計画を分かりやすく伝えるためのパーパスやミッションの策定と外部発信、それからホームページの刷新です。どんな内容を載せたら良いか、どんな情報が役に立つのか、営業メンバーの現場の声を重視しながら、コンテンツや写真イメージを決定。そして、撮影に向けて素材集めや人の手配などを段取りしました。

いよいよ撮影を行うことになったのですが、全社の繁忙期にぶつかり、日程はなんと1日しか取れないことに。その日だけで必要な素材を撮り切れるよう、緻密にスケジュールを調整しなければならず、非常に骨が折れた記憶があります。

——重ためな役割を担当されたんですね。本業とも両立しながらですか?

そうですね。時には早朝から出社したり、遅くまで残ることもありましたが、自分で手を挙げたからには、本業が疎かになっているとは絶対に思われたくないと思い、必死にやっていました。

——そこまでして本業以外のプロジェクトに参加したことで、得られたものはなんでしょうか。

このプロジェクトを通して外部のディレクターさん、ライターさん、ホームページ会社やカメラマンさんなど、普段接することのない方々とお仕事できたことは非常に大きな経験となりました。また、社内でも顔を合わせたことのない他拠点のメンバーと関係性を築けたのもよかったです。リブランディングの内容を他拠点に直接伝えに行った際に色々と話したことで、本業の営業に関することもお願いしやすくなりました。

リブランディング・プロジェクトが一段落した現在は、オウンドメディアの会議に出席しています。会社の方針や社長の考えを直接聞けて、会社との距離感がグッと近づきました。本業との両立は本当に大変でしたが、振り返ってみれば参加してよかったなと思うことばかりですね。

「やりたい」を尊重してくれるDICのカルチャー

——ひとつの仕事に集中して取り組む期間も大事ですが、いつもと違う仕事をしてみることでしか得られないものもあるようですね。最近は、また別のプロジェクトにも参画されていると伺いました。

営業所のリニューアルを行うことになり、プロジェクトの立ち上げから関わらせてもらっています。自ら手をあげ、プロジェクトを立ち上げ、今では業者の選定から工事日程の管理まで、プロジェクト全般を任せてもらっています。

——井上さんが、それだけ積極的に挑戦し続けられるのはなぜでしょうか。

営業以外の経験も積むことで、自分の人間としての幅を広げたいと思っているからです。僕は営業しかやってこなかったので、他の世界を知らなすぎる。かといって営業を離れたいわけでもないので、こうして本業と両立して挑戦できる機会には、積極的に飛び込んでいます。

でも、そんなワガママが叶うのは、サポートしてくれる周りがいるからこそです。本業を疎かにしないつもりではいますが、時にはどうしても手が回らなくなってしまうこともある。そんな時に「仕方ないな〜」「やっておいたよ」って笑ってカバーしてくれる人たちが僕の周りにはたくさんいます。

——DICのカルチャーも、井上さんの挑戦を支えてくれている。

そうですね。DICには個人のやりたい気持ちを尊重する文化があります。若手であっても、やりたいことがあれば周りは積極的に応援してくれる。私自身が1年目から営業への異動を希望していたように、面談でも個人の希望を話しやすい環境があります。時にはなかなか大胆な発言をする若手もいますが、それでも受け入れるのがDICのカルチャーです(笑)。

——挑戦を応援してくれるDICで、井上さんが今後チャレンジしたいことを教えてください。

今回のリブランディング・プロジェクトを経て、新しい挑戦の楽しさ・難しさを知りました。一方で、長く営業を経験し、10年間積み上げてきた蓄積があるからこそ貢献できた部分もたくさんありました。これからも営業で培った経験を武器に、自分なりの形で会社に貢献していけたらいいなと思っています。

そのためにも今は、改めて営業の仕事に本腰を入れ、しっかりと地盤を固めたいです。まずは目の前のお客様を大事にし、求められていることに応えること。その積み重ねが、また新たなチャレンジへ繋がっていけばいいなと思います。

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