二人合わせて勤続100年超!脈々と受け継がれるDICの流儀とは?
第一カッター興業株式会社(以下、DIC)には、勤続何十年という多数のベテラン社員が各地の営業所にて活躍しています。今回ご紹介する佐藤さん、泉さんは二人合わせて驚きの勤続100年超!茅ヶ崎営業所で現在の技術の「礎」を築いてきた、まさにDICの生き字引と言えるお二人。これまでの経験や時代による業界の変化など、様々な視点で語り合いました。
右:佐藤清蔵さん(1971年入社)茅ヶ崎営業所工事課
左:泉豊志さん(1976年入社)茅ヶ崎営業所整備課
DIC入社のルーツを探る
——始めに、現在のお仕事内容を教えて下さい。
佐藤:昔からカッターの技術者です。コンクリートをカッターで切断する工法のことを指しますが、今のように機械が自動ではなく足押しだった頃から変わらず同じ仕事をしています。
16歳で入社後DIC一筋、カッターひと筋で54年が経ちました。今も1日3現場回る日もあり、周囲から驚かれています。
泉:佐藤さんは生え抜きですが、私は中途入社で49年目です。入社してからはずっとコアドリリングという、ダイヤモンド製の筒状の刃先でコンクリートを穿孔する仕事をしていました。定年後の再雇用で今は整備課として機械のメンテナンス等をしています。
——泉さんの前職は?
泉:DICに入る前も同業他社におりました。ある時、企業間の繋がりがあったDICに技術を教えるという形で出向になったのです。当初は3ヶ月くらいで身になるだろうと思っていました。
ところがいざDICに行ってみると、これまで見たことがないサイズの大きな機械を保有していて、感動のあまり思わず声を上げたのです。たまたまその様子を見ていた当時の社長が「今後、より大きなマシンを導入するぞ」と言うので、ワクワクしてそのまま転職を決めてしまったのです。
茅ヶ崎というのもサーフィンをやる私にとっては非常に魅力的で「この会社で働いたら、毎日波に乗れるな…」という下心もありました(笑)。今では3ヶ月のつもりが49年です。
機械の進化と、技術をモノにすることの本質
——お二人が時代とともに変化したと感じるのは、どのような部分ですか?
泉:機械の進化です。今は種類が豊富にありますし、性能もかなり良くなりました。また機械のメーカーも時代とともに変わってきていますね。
東京湾を横断するアクアラインの途中に、ヨットのような形をした換気設備塔があるのですが、その中での作業には、同業他社が関東全域から集結しました。
各社持ち寄る機械がそれぞれ異なり、互いに機械のパフォーマンス・性能を現場で吟味しながら、その後の設備導入に活かしていきました。
「良いものはすぐに試す、取り入れる」というDICの未だ変わらない文化はその頃から芽生えていました。
佐藤:私も機械の話になりますが、昔は機械のエンジン馬力が小さく、道路を切断する「刃」も今ほどの性能はありませんでしたから、我々技術者の「知恵」と「工夫」でが養われたものです。
今の機械にはパワーがありますから押すだけでスムーズに切れますが、そうはいかなかった。力技だけでは機械が故障します。
ではどんな条件が揃えば切れ味が良くなるのか?と、試行錯誤を続ける日々でしたね。
その頃に手探りの中自分で見つけた「カッター作業の勘所」というのは、現代の現場においても通用します。
—機械の使い手の工夫が仕上がりに直結していたのですね。
佐藤:良い機械だから上手く切れると断言できないのが、この仕事の面白いところです。
やはり、条件が揃わない中でも工夫してやってみるという発想は、時代を超えて必要なのではないでしょうか。
自分で手を動かし、壁にぶつかり、乗り越えるという経験は、自分の意識次第で今からでも誰にでもできます。マニュアルだけでは知り得ない「感覚的な部分」は体得するしかありませんので、とにかく考え試すという繰り返しが大切だと思います。
営業所のプライドがひしめく時代。「切磋琢磨」とは。
—昔話でよく「営業所間の競争心が強かった」というエピソードを伺うのですが、お二人の時代はいかがでしたか?
佐藤:他の営業所の人手が足りない時にはよく欠員を補いに遠方にも行きました。
私たちの業界では「応援に行く」といいますが、送り出す側の先輩方からは「誰よりもよく働いてくるんだぞ!」という激励がありましたね。
やはり技術者は皆、自分の仕事にプライドを持っていましたから、わざわざ茅ヶ崎から他の営業所に行くからには自分の爪痕を残してくるんだぞ、ということだったのでしょう。
泉:私も、他の営業所をサポートしに行く際には鼻息を荒くしていましたね(笑)。
仕事に厳しい時代でしたから、お土産に良い結果を持って帰るのは必須でした。
会社からも様々な表彰を用意してくれて、材料(道具)の寿命を最も長く延ばした社員を表彰する場もありました。私たちの仕事では材料に掛かる経費が大きいのです。
ですからこうした表彰は、与えられた道具を大切に扱う意識にも繋がっていました。
—DICには変わらない流儀と、時代とともに訪れる新しい文化が共存していますね。
泉:そうですね。今のDICには会社の一体感が醸成され、昔と違って部署間の協力意識も根付いてきました。異なる分野の技術者同士、先輩後輩関係なく談笑しながら休憩している姿をよく見かけます。私たちからすれば羨ましくもあり、微笑ましい光景です。
後輩への指導。自分で答えを導き出すから成長する
—お二人が後輩指導で心掛けていることを教えてください。
佐藤:丁寧に、わかるように教えることです。
きっと昔の私を知っている社員からは、「よくそんなことが言えるなぁ…丁寧な方が怖い…」なんて言われるでしょうねぇ(笑)。要点が10あるうちの1しか教えていなかったでしょうから。まあ昔はそれほど自分で考えなさいという風土でした。
近年のDICは適切な教育ができる環境が整ってきました。先輩にも質問し易いでしょうから、積極的に関わってどんどん吸収していただきたいです。
泉:私はちょっとした工夫で作業効率が上がる、ということを現場でよく見せていました。
コードの巻き方一つでも随分生産性は上がります。私は30cm間隔で巻いておく自分のルールがありました。
現場で物を測る際に、そのコードを取り出せば「30cmの何周分か」という計算でおおよその長さが測れるのです。作業準備のスピードが格段に早くなりますよ。
そのひと手間を惜しまずに、現代でも時間をかけて良いことってあると思うのです。それが遠回りのようで意外と沢山の気付きを得られる近道かもしれません。
先輩から受け取ったバトンを、次の世代へ
—今後も大切に育ててほしいと考えるDICの良さはどのようなことですか。
佐藤:日々の機械の手入れです。お客様からのご依頼をいただき我々の仕事があるという、感謝の気持ちを持てれば、自然と身に付く作法だと思っています。こうしたマナーも先輩方がつくってきたのです。
汚れが付いた機械でお客様の元に向かうのか、毎日綺麗に手入れするのか、そういうところでも「DICの印象」がつくられていると思います。
そして、これはかつての社長が口酸っぱく言っていたのですが、どんな仕事でも「物事を正確に覚えなさい」と。
速さは、慣れとともに身につきますが、正確さというのはすぐには身に付きません。新人が
1番良いのは「速くて正確」。2番目に良いのは「遅くても正確」。3番目が「速くて不正確」。そして最も良くないのは「遅くて不正確」。まず目指すのは2番目の「遅くても正確」です。イレギュラーも多い仕事ですが、周囲を頼りながら慌てずに、確実に成長できる素晴らしい環境を、今後も大事にしていただきたいと思います。
—今日は貴重なお話ありがとうございました。