入社3年目で「職長」を任されている若手社員2名から、ウォータージェット工法の特徴とやりがいを聞く

第一カッター興業株式会社(以下、DIC)は、工事の内容や現場環境に合わせ、さまざまな技術を使い分けています。高圧水でコンクリートを破壊したり、対象物の表面を削ったりするウォータージェット(以下、WJ)工法も、そうした技術のひとつ。

WJ工事部に所属する入社3年目の金子さん杉本さんは、WJ工事に従事してきました。現在は「職長」として、現場の進捗管理やお客様との打ち合わせもこなしています。今回は、そんなお二人に、WJ工法の特徴ややりがい、職長として成長するために意識していること、そして今後の目標について聞きました。

対象物以外への悪影響を最小限にできるWJ工法

——お二人が日々行っているWJ工法とはどんなものなのでしょうか。

金子さん:WJは超高圧ポンプからでた高圧水を用いて、コンクリートを破壊したり、壁や天井、道路の表面を削ったりする工法です。コンクリートに含まれるモルタルに水を流し込むことで、衝突圧を発生させ、内側から破壊していきます。

杉本さん:工事の内容によっていくつかの機械を使い分けています。例えば、ケルヒャー(高圧洗浄機)のように、手で持てる大きさの機械から高圧水を放出し、コンクリートを破壊する機械を「ハンドランス」と呼んでいます。人力による操作が可能なので、ピンポイントで対象物を破壊したり削ったりすることが可能です。

他にも、「アクアブラスト」と呼ばれる、壁や天井、道路の表面を削る機械もあります。フライパンのような形をした形状で中にバーが着いており、そのバーの左右に角度を変えることができる6個のノズルが付いています。それが水圧で回転する仕組みになっており、劣化したコンクリート表面を削ることができる機械です。トンネルの天井の処理や、高速道路の白線を消す作業に用いられます。

大きな対象物は「XY治具」が使われます、これは左右にH鋼(縦軸)と呼ばれる鋼材とそれを繋ぐ角パイプ2本(横軸)で構成されています。また現場の状況施行箇所に対して縦何m横何mの治具を持っていくかを選定しています。パイプには滑車がついていて、遠隔操作で上下左右にWJのノズルを動かしながら、対象物を壊していくんです。

——他の工法と比べて、WJの特徴を教えてください。

金子さん:ひとつは、「コンクリート以外への悪影響を最小限にできる」ことです。他の工法では、例えばコンクリートに穴を開けようとした際、中に含まれる鉄筋なども壊してしまいます。高圧水で鉄筋は傷つかないので、WJは対象のコンクリートだけを壊せる工法なんです。

また、「振動が少ない」ことも特徴のひとつです。よく道路工事の現場で目にする、だだだっと地面を叩きながら破壊する機械がありますよね。あれって、壊したい部分以外のところにもマイクロクラックという目に見えない傷が残ってしまう可能性があるんです。それが大震災などでひび割れの原因になってしまったりします。WJは水を使っているので、振動が少なく、そうした心配はありません。

杉本さん:あとは、「環境への影響を最小限にできる」ことも大きな特徴だと思います。WJは、水にガーネットという砂を混ぜることで、鉄筋を切断することもできますが、その際、火花が散ることはありません。火気厳禁の工場内などでも使用できます。

材質の知識や経験から学んだコツが作業の要

——実際に作業をしてみて、難しさややりがいを感じる部分はありますか?

杉本さん:はじめの頃は、ハンドランスを上手く扱えなかったです。対象物に水が衝突した際の反発力が「20キロ」ぐらいあって、それを支えながら機械を操るのが難しいんです。また、対象物に当たった水や、壊れた細かい石などは、すべてこちらに跳ね返ってきます。身体にあたると痛いし、視界がないなかで作業しなきゃいけません。

金子さん:僕も最初はそうでしたが、やっていくうち、水の跳ね返りを抑える角度がわかってきました。その角度を維持できると、視界がクリアな状態で穴を掘ることができます。

杉本さん:コツで言えば、水が出るノズルと対象物までの距離を保つのも大切です。距離が短すぎても長すぎても、コンクリートは壊れません。視界が悪いうえ、徐々に穴も深くなっていくなかで、1cmか2cmくらいを保つ必要があります。経験と勘によって、最近はなんとか距離感を掴めるようになりました。

——ハンドランスは手持ちの機械だからこそ、繊細な技術が必要なんですね。遠隔操作で動かす、XY治具を用いた作業についてはどうでしょう?

杉本さん:ボタンひとつで作業ができるので簡単そうに見えますが、材質やノズルに関する知識、そして施行する深さやグレードによってヘッドの種類を変えないと上手くいかない奥深い作業だと思います。

成長するための秘訣は「小さな自分の変化を喜ぶ」こと

——WJ工法の特徴と難しさが理解できました。お二人は職人として技術を高める一方、「職長」の役割もされているんですよね。

金子さん:はい。職長はお客さんとの打ち合わせや、車両の配置決め、危険予知活動など、工事が円滑に進むための下支えをする役割です。また、協力業者さんや一緒に現場に入った作業員の方に対して、進め方を伝達していく役割も担っています。

——職長にはどのようになれるんでしょうか?

金子さん:今は、入社3年目に受ける「3年目研修」で、職長の仕事内容を教えてもらえますが、僕らは現場で学びました。

杉本さん:僕が初職長を経験したのは、1年目の時です。一緒に作業をしていた先輩が、他の現場も回らないといけなくなり、代わりに職長を頼まれたんです。徹底的に引き継ぎをしてもらい、わからないことはすぐに電話で確認できる体制があったので、なんとか無事に工事を完了できました。

——急な代役をきちんとこなされたんですね。

杉本さん:先輩のサポートあってですね。今では、何度か職長を経験していますが、やっぱり先輩方から学べるものはたくさんあります。「点じゃなくて全体が見えている」と言うんでしょうか。僕は目の前の段取りをこなすことに意識が向いてしまいますが、先輩たちは、その次の次の工程まで考えながら作業をしている。だからこそ、適切な機械の選び方や効率のいい作業順序を考えられるんです。

金子さん:職長としてはもちろんですし、ひとりの職人としての技術もまだ追いつけません。先ほど話したハンドランスにしても、僕らに比べて断然速い。ひとりの職人の作業が早く終われば、工期全体を短縮できたり、現場の数量を増やしたりできます。会社全体のことを考えても、技術力は磨いていきたいです。

——お二人の仕事に対する意欲が伝わってきました。成長するために日々、意識されていることはありますか?

杉本さん:よく言われることだと思いますが、自分なりの考え方を持って現場に入ることを大事にしています。ただ現場で言われた作業をして帰るだけでは、学べることも少ないからです。現場一つひとつをみながら、「前の現場のやり方を応用できるな」「こう工夫したら前よりうまくできる」と試行錯誤をする意識を持っています。

あとは、「小さな自分の変化を喜ぶこと」も大切です。人は少しずつ成長するものだと思うんですよね。他人からはわからなくても、自分ではちゃんと感じていたりする。そういう小さい変化を見つけてあげることで、モチベーションを保つことができますし、より前向きに仕事に取り組めるのかなと思います。

経験を積んで大きな現場を任される職長に

——一朝一夕の成長はないからこそ、小さな積み重ねを意識することが大事なんですね。では最後に、これからのお二人の目標を教えてください。

杉本さん:大きな現場の職長を任されるようになりたいです。大きな現場は、先ほど話したXY治具などを用いた機械施工がメイン。作業計画を立てるためには、営業の方と一緒に下見に行って、寸法を測ったりしなければなりません。さらに、その情報をもとに、対象物によって治具の長さやヘッドの種類の方を選ぶ必要があります。難易度の高い仕事ですが、知識と経験を積み重ね、ひとりでもできるようになりたいです。

金子さん:僕も大きな現場の職長を目指しています。あとは、ハンドランスの扱いで「WJ工事部No.1」を目指したいです。先は長い道のりかもしれませんが、一回一回の現場を大切にして、技術を磨いていきたいと思います。

杉本さん:WJ工事が人目に触れることはありません。なぜなら、高圧水が人を貫通してしまうほどの威力で危険だからです。でも、目に見えない作業があるからインフラが正常に動いていることを考えると、やりがいを感じることができます。そうした誇りを持ちながら、引き続き頑張っていきたいです。

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