関わるすべての人が幸せを追求できる会社でありたい——DIC 管理本部長の安達さんに、今後の人材戦略を聞く

2021年11月、第一カッター興業株式会社(以下、DIC)は「中期経営計画(2021年7月1日~2024年6月30日)」を発表しました。中経を構成する「4つの大きな戦略方向性」のひとつに「人材戦略」があります。

この人材戦略を推し進めるのが管理本部長の安達さん。2001年、第二新卒としてDICに入社してから20年以上も勤めあげ、会社のことをもっともよく知る社員のひとりです。

今回は、そんな安達さんに人材戦略についてお伺いしました。安達さんの入社当時からあった、DICの「人に対する考え方」とは。また、人材戦略の現在地と展望は。人と組織の側面から、DICの「あるべき姿」を紐解きます。

ボトムアップで作り上げた「EX」の方針

——中経の「人材戦略」の概要を教えていただけますか?

人材戦略は、3つの柱でできています。それぞれ「EX(従業員体験)」「ブランディング」「安全・安心」です。その中でも特に注力していきたいのは、「EX」の多様化・質向上です。

業界のエンジニア(職人)が減少している状況を打開するためにも、女性や若手など多様な人材が「働きやすさとやりがい」を感じながら就労できる環境を整えたいと考えています。

EXの具体的な方針は「エンジニア(職人)のキャリアの多様化」「ステージに応じた教育機会の提供」、そして「女性・若手社員の活躍」です。

——どのような議論やプロセスを通して、その方針は決まったんですか?

ボトムアップで社員から集めた意見をとりまとめました。会社の「あるべき姿」を考える「リブランディング・プロジェクト」に手をあげてくれた有志メンバーが提案してくれたんです。執行役員会で議論した内容とも重なっていたため、現場側、経営側が合意した上で決定しました。

こうした「ボトムアップによる会社づくり」を、DICは大切にしています。何でもかんでもトップダウンで決めるのではなく、自分たちで考え、自分たちの働きたい会社を作るという「主体性」が仕事にやりがいをもたらすと考えているからです。

最近も、管理本部を本社ビルの2階から5階に移すプロジェクトを、男女の若手社員に担当してもらっています。私をはじめ、部長クラスは一切手を出さないという約束のもと、レイアウトの考案、予算組み、業者の選定など、すべて一任しているんです。

危険と背中合わせの仕事だから「人間性」を重視する

——ボトムアップで作られた中経の人事戦略。具体的にどのようなことに取り組んでいるのでしょうか?

「エンジニアのキャリアの多様化」に関して言えば、2021年4月に「新しい等級制度」を設計しました。この制度のポイントは、管理職ではなく、エンジニア(職人)としてのキャリアパスを設けたことです。エンジニアとして働き続けたい方が、管理職と同等の等級になれる設計にしています。

新制度設計の背景には、エンジニア、総務、営業のみなさんに対して「適切な評価や報酬を提供したい」という思いがあります。この仕事が成り立っているのは、現場で支えているのはプレイヤーのみなさんのおかげ。その尽力に報いたい。彼ら彼女らが納得感を持って、長く働きたいと思うような会社でありたい。そんな考えをもとに作ったんです。

専門性を追求し、高いパフォーマンスを発揮できる優秀なプレイヤーがいればいるほど、DICはより社会に貢献することができます。さらに言えば、職人の減少に悩む業界全体の底上げにもつながるはずです。業界のトップランナーとして、ロールモデルになりたいと考えています。

——まさに「キャリアの多様化」を推し進める制度ですね。他に、「ステージに応じた教育機会の提供」、「女性・若手社員の活躍」について取り組まれていることはありますか?

この2つに関して、具体的な施策は検討中です。ただ、DICとして大切にしたい考え方は明確。学歴や能力ではなく、「人間性」を重視した「採用・育成・配置・評価」を心がけています。

安全対策は万全ですが、それでも私たちの職場は死と隣り合わせの環境です。青くさい言い方をすれば、「お互いの命を預けあえる仲間」でなければ、一緒に働くことはできません。

ですから、教育機会を提供したり活躍機会に抜擢したりする際も、学歴や能力だけで判断してはいけないんです。責任感や精神的な強さ、そして「この人なら任せられる」と感じさせる人間性がある方に、さまざまな役割を任せるようにしたいと思っています。

「トップ営業マン」「新規事業責任者」を経て管理本部へ

——そうした「人間性を重視する」考え方は、DICに昔からあるものですか?

そうですね。私がDICに入社した2001年には、すでにそうしたカルチャーがありました。

今もそうですが、昔はとくに職人カタギな人が多かったんです。仕事の空き時間に車をいじったり、飲み会で喧嘩になったり、やんちゃなところもありました。しかし、仕事に対してはみなさん真面目に取り組んでいました。

23歳で未経験の営業職として入社した当時の私は、まったく成果を出せず営業成績、最下位。それでも、先輩たちの姿を見ながら真剣に仕事に取り組んだ結果、5年目にはトップになれました。「責任感があって一生懸命働く人のことを応援する」というDICのカルチャーが、私を育ててくれたのだと思います。

——トップ営業になられてから、現在の管理本部長に抜擢されるまでの経緯を教えてください。

30歳くらいの時に所長代理と所長を経験したのち、ビルメンテナンス事業部の立ち上げに携わることになりました。ビルメンテナンス事業部とは、マンションやオフィスビル、商業施設などの不動産に対して、主に給排水設備の高圧洗浄・保守点検など維持修繕に関わる業務を行う部署です。

そこで事業責任者として10年間働き、ゼロから「売上3億円」の事業にまで育てました。そして4年前、現職の管理本部責任者を拝命したんです。

——事業責任者もされていたんですね。新規事業の立ち上げと収益化をする中で、さまざまな経験をされたんじゃないでしょうか?

何より大変だったのは、不動産会社の人との関係づくりです。工事事業のクライアントとはまったく違う方々なので、いちから開拓する必要があります。最初の2年は、毎日飛び込みで営業をしたり色々な方からご紹介をいただき、週に3〜4回、不動産会社や他業種の方々と食事をしていました。建設会社関係は一切いませんでしたので、初めてDICの社名を知る方々が多かったです。

不動産会社にとって、清掃や保守点検の業者を変えることはリスクですから。なにか問題があれば直接的に住人に悪影響が出てしまいますし、管理会社からも責任を追求されます。

結局、信頼してもらえる関係性が築け、案件を紹介してもらえるようになるまで5年くらいかかりました。ターニングポイントとなったのは、大手デベロッパーとのお付き合いが始まったことです。

関わり始めて2年ほどで、先方が抱えている案件の多くを任せていただけるようになりました。選んだいただいた理由は「ソフト面の手厚さ」だったようです。施工の内容という「ハード面」だけではなく、丁寧な報告などの「ソフト面」を評価していただきました。

そうしたことも含め、工事事業の中では経験できなかった多くのことを、ビルメンテナンス事業部では学ばせていただいたんです。

——それから管理本部責任者に。現場に関わっていたところからいきなり抜擢されたんですね。

私自身も、最初はその人事に驚きました。管理本部の中から責任者が選ばれると思っていたからです。しかし、社長の高橋さんとしては「現場の感覚を管理部に取り入れたい」という考えがあったようです。今では、新たな成長の機会を得られたと前向きに捉えています。

今年で就任から4年経ちました。まだまだわからないことがたくさんあり、部署のメンバーに教えてもらいながら仕事をしている状態です。選んでいただいたからには期待に応えられるよう、努力を続けていきたいと思います。

頭脳、技術、センス。すべてが求められる面白い仕事

——安達さんのキャリアからも、「経験や能力だけで判断せず、教育機会や活躍機会を提供する」というDICの考えがうかがえますね。一貫して「人」を大切にしてきたDIC、今後どのような会社にしていきたいですか?

協力会社も含め、関わる全ての社員が「幸せ」を追求できる会社でありたいと思います。学歴や能力に関係なく、努力できる人に挑戦のチャンスが舞い込み、評価される。そんな会社であり続けたいです。そのために管理本部としては、人や組織の観点からできることを着実に進めていきます。

DICの仕事は、非常に面白くやりがいがあります。「道路を切る仕事」と言うと、単純作業のように聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。毎回違う現場環境に合わせて緻密な計画を立てる頭脳、それを実行する技術、そして、現場の状況に臨機応変に対応するセンスが求められる仕事なんです。

そうした魅力をしっかりと伝えていくことで、この仕事に興味を持ち、一緒に働きたいと思ってくださる方が増えてくれたら嬉しいです。

#TAG

  • リブランディング
  • 人事戦略
  • 人材戦略
  • 多様化
一覧に戻る